飽くなき挑戦

メモ帳からオムライスへのあくなき挑戦の模様が発掘されたのでここで公開します。

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ケチャップどうしてそうなったの???あとめちゃくちゃ半熟。いや半熟好きだけど普通ふわとろってそうじゃないじゃん。何?おまえ。センスゼロか?ボケが。あと野菜の焼きが甘くて人参がめっちゃ硬かった。多分生だと思う。どうしてそういうことになるの??????コンソメをちゃんと使えよ なめてるのか マジで
2019/01/18

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鶏肉が生臭い。ケチって買ったバター三分の一のやつ全然美味しくない。変な匂いがする。ケチャップの賞味期限が今日だった。あと何で卵そんなにゴワゴワなの??ふわとろオムライスはどこへ行った???足りない材料をよくわからないもので代用しようとするのをいい加減やめろ

2019/02/02

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ケチャップが終わりました。卵をふわとろにするために牛乳を入れてみたけど、多分量が少し多かったのだと思います。鶏モモより鶏むね肉とかささみとか使った方が生臭くなくて美味しいかもしれない。人間の味に近づきつつある。

2019/02/12

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だいぶいい感じじゃない?????ケチャップ、新しいのを買いました。お肉はベーコン。調子に乗ってブロッコリーも乗せてみました。いいね。はい。味も良かったですね。あとはもうこれが、すっと、こう、卵がすっと、のれば最高じゃない?

っていうかなんで私はこんなにオムライスに執着してるんだ??????
2019/02/20

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大根おろしが余っていたのでめんつゆを駆使して和風オムライスにしてみた。絵面はよろしくないが味は普通に美味しい。めんつゆは大変有能である。

鶏肉に関しては、特定の部位が生臭いというよりは安い肉が生臭いんではないかと思い始めた。これは鳥モモ肉を使ったけど普通に美味しかったので。
2019/02/22

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まじでむり。何?私はなんでこんなことをしているんだ?滅ぶべきは私なのか?人類ではないのか?は?黙れゴミ。

卵でうまく包もうとしたけどできなかった。結局私には何もできない。何も生み出せない。何も救えない。私は生きて喋るだけのゴミ。さようなら。グッバイマイフレンド。あっ、友達いなかったわ…………

2019/03/04

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何にも感じなくなってきた。結局美味しいとか美味しくないとか、生臭いとかそうじゃないとか、そんなのは主観に過ぎないんじゃないだろうか。私たちは五感に踊らされている。そうやって生まれて、そうやって死んでいくのだ。

2019/03/31

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わたしはいったいなにをしているんだろう。オムライスをうまく作れるようになったからなんだって言うんだろう。ケチャップがもう直ぐ終わりそうだ。なんだってこんなことをしているんだろう。それしか作るものがないのか。

 

20××年○月▲日

女はなんだか、自分がひどく愚かなものに思えてきました。気が付いたらいつもオムライスを作っているのです。写真に撮るのも馬鹿らしくなるくらいたくさん作ってたくさん食べましたが、どれも女の理想とするオムライスではないのでした。それなのに、それでも女は、オムライスを作り続けていたのです。まるでオムライスに取り憑かれていると、気が付いた時にはもう遅いのでした。空に浮かぶ満月がオムライスに見える夜もありました。いつものようにチキンライスを作ろうと具材を炒めていたとき、女は突然、オムライスが恐ろしくてたまらなくなりました。

女は家を出て電車に乗りました。一番後ろの車両に乗って、遠ざかる景色をぼんやりと見つめていました。それより他にすることがないような気がしたからです。景色は左から近付いてきたと思えば瞬く間に右側へ遠ざかっていくばかりで、永遠に触れることはできません。遠くの景色は初めから眺めることしかできず、近くの景色は直ぐに遠ざかっていくのです。女は悲しくなりました。電車を降りて、生暖かい風に頬を撫でられながら、ホームを歩き、改札に向かいました。そこは降りたことのない駅でした。

改札を出ると、たくさんの人がそこにはいました。「もう一軒行こうぜ」などと騒いでいる大学生グループ、「じゃあまたね」と改札を挟んで手を振り合うカップル、ティッシュを配るアルバイト、改札のそばのベンチに座って彼氏が彼女に「ちゃんと話せよ」と怒っている険悪なカップル…。太陽は西へ傾いていき、それらすべての景色をオレンジ色に染めていきます。女は誰もいないワンルームで一人、オムライスを作っていた時のことを考えました。カーテンを閉め切ったワンルームには夕日が差し込んでくることはありません。

女はもう一度電車に乗りました。視界の端から視界の端へ流れていく景色を見ても、もう悲しくはありませんでした。夕日はビルをオレンジ色に染めています。家に帰って、ベランダのカーテンを開けて、作りかけのオムライスを見つめました。引っ越してから初めてオムライスを作った時も、こんな風に見事な夕日が窓から差し込んでいました。その日も女は満足とは言えない出来のオムライスを作りましたが、もう恐ろしくも、虚しくもありませんでした。

女は気がつくと、テーブルの前に座っていました。テーブルの上のオムライスは既にありません。女が食べたからです。あとにケチャップのついた空の皿が一枚と、使用済みのスプーンが置いてあるばかりでした。